5枚のワイシャツと夜に移動する そのいち

夜11時、八重洲口、バスターミナル、着いて、年末だから、か、人がたくさんいて、映画のはじまりみたいだ、な、って思う、見知らぬ若い男女の、かばんがぶつかったりして、さ、実は、アパートでおとなりさん、でしたてきな、そういうストーリー、には出演、しないんだ、あたしは。

夜行バス、室内灯、ブルー、チューハイを二缶空けて、も、眠れなくて、ついに、三つめの、休憩、SA、真夜中、冷たい空気を吸い込んで、こわばった体を、ストレッチ、する、スウェット、を、はいた若いやつらが四人くらい、軽から出てきて、丸まってたぼこを、吸っている、のが目に付く、シートに戻るのが嫌で、ぐだぐだベンチに、座っている、と、倒していいですか、とさっき、聞いてきたおっちゃん、前の職場の、上司、に、めっちゃ似てる、がぼりぼり頭かきながら、自販機の前で、迷っていた、出発しても、やっぱり室内灯、ブルーで、窓からもれてくるのは、高速の、照明灯の、オレンジ、一度、車内トイレに行ってから、ようやくうとうとした、と、ころで電気ついて、車内放送かかって、無事に、運ばれたんだ、あたしは。

びっくり、した、こんなにも、少なかったんだ、段ボールにつめて、るときはずいぶん、くたびれたのに、彼の、でもなくて、共用、のでもない、じぶんの、もちもの、って、たった三つ、Mサイズ、段ボール、たまげた、さすがにもっと、いろいろこの部屋であったはず、だけどなって、彼とも、たくさんいろんなことが、あったんだけど、な、いや、あったつもり、なんだけどな、っていう、きゅんとなる、きもちと、同時に、いなくなれる、とおもった、ああ、三つ、Mサイズ、段ボールで、身軽だ、いままさに、やろうとしている、ように、いなくなれる、いなくなれる、いなくなれる、んだ、あたしは。

祖母、お通夜、準備、彼の、親戚、たぶん五十くらいの、おばさん、あたしたち孫みんな、でお花、好きだった白いお花、いっぱい並べてあげてた、のにね、なのに、あのばばあ、聞こえるよう、に、背中ごし、に、明るい花の方が、ね、お顔が、映えるのよ、信じらんなかった、どついたろ、かおもて、でも、お顔、あんまり安らか、だったから、そのぶん、お花きちっと、丁寧に、並べて、いきどおり、お花並べることに、ぶつけて、信じらんなかった、ばばあ、とそれから、横で黙って、気づいてるのに、神妙な、面持ちで、立ってやがった、彼、信じらんなかった、ほかにも、我慢ならないこと、あったけど、今回ばかりは、って思ったから、帰り、タクシー、言ってしまった、んだ、ぜんぶ、そして、それでも、彼の、感情っていうのか、な、なにも言わなかったし、何考えてるのか、わかんなくて、ていうか、もう、彼が、わかんない、って思ったら、たぶん、首都高の、ぐるぐる下る、トンネル、遠心力で、かたにもたれながら、泣いちゃったんだ、あたしは。

飛行機、LCC、22時20分発、窓際、がよかったけど、ど真ん中の、席で、両隣は気が早いサングラスぶらさげた、大学生、外の景色が見えなくて、なんか、映画、の、セットみたいだな、本当に飛んで、るのかな、メルカトル図法、でモニター、に映し出された、現在地、グアム、上空、太平洋、マリアナ海溝、とか、らへん、たぶん、すごく高いとこ、だから、きっと、インターネット、とか、飛んでんじゃないのかな、詳しくないけど、こういうとき、寝れないたち、だから、夜泣き、の、子どもをあやす母親、のひそひそ声を、注意深く聞いている、なんていっているか、わかんなくても、申し訳なさ、を感じて、そこに人種はないな、って思った、何人か、わかんないけど、がんばれって、思った、母親も、それから子どもも、せいいっぱい泣けよ、こんな、セットみたいな空間気にせず、泣いて泣いて、泣きまくれよ、窓、つきやぶって、ここらへんの高さ、が、住まい、の神様に聞こえるくらい、泣けよ、そしてそっと、録音する、なにも受信せず、なにも、送信しな、い、機内モードで、あたしは。